(1) 搬入

窓から吹き込む冷風が火照った体には心地良い

今日は会社の打ち上げだ、事務所で日頃の激務を癒すよう多量のアルコールを胃の中に流し込んだのだ
ほろ酔い気分で社内の風呂に足を運ぶ
やはりデカイ風呂は良い、湯船の中で思いっきり手足を伸ばし急速に回る酔いを脱力感の増加で感じる
この後は寮に帰って寝るだけ、ふらふら千鳥足で帰路につく


玄関を開けると
”ケロさん宅急便です”と書き置きが
ひょいと保管室を覗くとオーダーしてあった例の物が2段積みになっている、が、きっちりと施錠している
「仕方がない、寮長さんに出してもらうとするか」
スキップしながら寮長室に向かう姿を自分ながら愛らしいと感じるが、たぶんおぞましいのだろう
千鳥足のスキップは、まるで壊れた○○だ
距離が無いので寮長室にはすぐに到着する

トントン、「寮長さん?ケロです」

トントントン、「ケロです!」


反応が無い、少し強くドアをノックする


ドンドン、「寮長さん?」

ドンドンドン、「寮長は〜ん!?」


シカトしてやがるな、ドアを蹴ってみる

ドンドンドシ〜ン!

香港映画のように吹っ飛ぶドア!
飯を喉に詰まらせる寮長!
泣き叫ぶTVの中のアダルト女優!

ドアを蹴破るやいなや、拳銃片手に駆け込むケロ
寮長の首根っこをひっ捕まえ宙高く掲げ上げる
勝ち誇った獣の咆吼のような声で叫ぶ

「寮長は〜ん!例の物引き取りにきたでぇ!!」

まるであやつり人形のように奇妙な方向に手足をバタつかせる寮長は、初老の哀愁すら感じさせる


ほっぺに御飯粒を張り付けたお茶目な寮長を連行し開錠の呪文
「☆△×?○」
開く保管室の扉

「ケロやん、めっちゃ重いでぃ」と罵る寮長を後目に
そそくさとダンボール2箱ににじり寄るケロ
目標が達成されれば寮長なんか知った事じゃない

よく見るとダンボールの中にトランクケースらしきものが・・・
「おぉ!?コンサート機材に使われるような梱包じゃぁないか?さすがだなぁ」と関心しながら
ちょこんと突き出た取っ手をパチンパチンと鳴らしてみる

確か
例の物の重量は20kg強、2個で40kgなら余裕の重さだが
かさがあるし慎重に事を進めたいところだ
となると
4階のマイルームまで階段2往復だな
と冷静に頭の中で計算する


いつものように、ひょいと右肩に・・・

おっ?おもい。

胸より上にあがりましぇ〜ん!

むぅ・・・酔っぱらっているから酔っぱらっている事忘れていたのだな?
さっきタオルも重かったものなと思案しきり


夕餉の席を強襲され鬼瓦のようになった寮長の顔、その目が”ザマーミロ”と笑っている
これは悔しい!いかにも悔しいぃっ!!

「あぁ、右肩の調子悪いなぁっっっ!」

と聞こえるような独り言をつぶやき
血尿が出る思いで左肩に担ぎ上げる


「寮長は〜ん!はよ帰って飯喰いやぁ!!シッシッ」と追い払い
十字架を背負いゴルゴダの丘をのぼるよう悲痛な面持ちで階段を一歩一歩のぼりかける

2階・・・

3・・・ダメだこりゃ(死)
ここら辺から酸素が薄い、海抜6mはあるだろうか?
常人では危険な領域である、息が切れるどころの騒ぎでは無い
完全に酸欠状態に陥り、ブラックアウト寸前である
いくらアルピニストのケロといえど
力仕事+アルコール分解で酸素がまったく足りない

階段の冷たい壁にもたれながら、貴方を想ったりはしないが
”クロネコのオッサンは小脇に抱えて恥かみながらサインをねだったのだろうな”と思ったりする
ますます悔しいでわないか!


悔しさをバネに、よろけながらも一気にマイルームへ駆け上がる
強度の負荷に引きつる平目筋、途切れかける意識、飛び散る血と汗と涙と鼻水とわけの分からないケロ汁と・・・


か・・・勝った!
ケロは寮長やクロネコのオッサンやマッキンレーに勝ったのだ!
雲の切れ間から神々しく柔らかな光が降り注ぐ、まるでレンブラントの絵画のように・・・
「パトラッシュ?もう疲れたよ・・・」とその場に倒れ込むケロ
”オレはやった”という満足感に心地よい疲労と睡魔が襲って来る
搬入したダンボールは部屋の隅で捨てられた子猫のよう、ん〜ん〜ん〜〜♪


でも・・・

オレの中の・・・遠く

・・・の

方から・・・

何か聞こえ・・・

て・・・?










「もう一箱あるじゃ〜ん」





わ〜ゴメンなさ〜いっっ!次はちゃんと書きますぅ〜ゆるしてけれぇ〜!!



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